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敵はこちらに向かって来ている。
今更、誤魔化しようがない。
それならいっその事、ここで戦っておくか?
怜奈は胸に抱えた浅葱の口から手を外し、そのまま覗き込んで小声で話し掛けた。
「涼介さんをお願い」
そう言って浅葱を後ろに下げ、自分は肩に立て掛けた槍を手に持ち、夜宵に向けて構えた。
私達に情報を与えてくれる夜宵に、これ以上の迷惑は掛けられない。
体裁としてでも、私達は敵同士である事を見せ付けておかないと……
夜宵が怜奈の思惑を察するより早く、部屋の襖が開いた。
「あぁ!?居んなら呼べよ、夜宵」
「今、連絡、しようとした」
入って来たのは一人の鬼。
顔は般若の面で隠れており、窺い知る事は出来ないが、声と喋り方からして若い男である事を推察し、観察を続ける怜奈。
これが、ヘマハ……
身長は平均的な日本人男子といった所か、細身ではあるが細過ぎるという印象ではない。
背中に背負ってる武器は……、太刀?
それにしてはやけに長い。
2メートルはあるんじゃない?
怜奈は、あんなの扱えるのか?という疑問より、室内で振り回せるのか?という疑問が先に立った。
「ま、いーや。その調子で二人にも連絡してくれや」
「…………」
その申し出に沈黙する夜宵。
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