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怜奈がつんのめって行く先には歪み。
何処に繋がっているのかは分からない。
暗闇が広がるだけの歪みに、怜奈は僅かばかりの恐怖を覚えた。
「まっ……!!」
怜奈が何を口にしようとしたのか、夜宵には分からないが、すぐさま歪みを閉じ、倒れ込む怜奈に巻き込まれて尻餅を付いた。
「やっぱりそうかよ。元とはいえ、仲間を殺すのは気持ちの良いもんじゃねぇな」
引き抜いた野太刀を両手で振り翳すヘマハ、怜奈には後ろを振り返る余裕はなかった。
だが、ヘマハの発言からして夜宵の身が危険であり、同時にその近くにいる自分の身も危険である事には気付いた。
ごめん、私の所為だよね。
だから……、責任は取るから。
この身に替えても、貴女を死なせたりはしないから。
ん?もう死んでるんだっけ?
ま、いっか……、そんな事……
背後で振り下ろされる野太刀から夜宵を守る為、怜奈はその小さな身体を抱き締めた。
ヘマハの後ろからは斧を持って駆け出す浅葱と、拳銃を構える涼介の姿がある事を、怜奈は知らない。
浅葱がヘマハに斬りかかるより早く。
涼介がヘマハに発砲するよりも早く。
そして何より、ヘマハが怜奈を斬りつけるより早く、それは起こった。
「や……」
怜奈が夜宵の名前を呼ぼうとするより早く、刃は夜宵の身を裂いた。
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