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怜奈は溜め息と共に、槍を持って立ち上がった。
ヘマハを隔てた浅葱と涼介もその姿を確認する。
「何で、殺した?」
その声を聞いたヘマハは、後ろに立つ怜奈に少しだけ目線を向けた。
唇の端を上げ、嘲笑うかの様な目を見せ、笑いながら口を開く。
「手元が狂った、とでも言っとこうか」
怜奈は大きく息を吸い込んだ。
怒りに任せて突っ込みそうな自分を抑える為、巫山戯た事を言うヘマハに対する殺意を抑える為、深呼吸をする怜奈。
吐いた吐息を上に向けた事で怜奈の前髪は暴れ、その乱れた髪を直す事なく、ヘマハへ向けて口を開いた。
「それが、仲間を殺した理由?」
「はっ、お前なに甘臭ぇ事言ってんだ?」
そのままの体勢で受け答えるヘマハは、今日一番の笑顔を見せた。
嘲笑とも取れるその顔に、怜奈は怒りを覚えるのだった。
「敵に情報を漏らす屑を、仲間とは言わねーんだよ」
……ここまで神経を逆撫でされたのは生まれてこの方、一度も無い。
ホントに……、ムカついた。
怜奈は怒りを抑え切れなかった。
槍の腹を右手で持ち、ヘマハへ向かって走り出す。
それを十分に引き付けた所で、盾にしていた浅葱を怜奈の方へ向けるヘマハ。
盾が自分から外れた涼介は、構えた銃の引き金に指を掛けた。
「涼介さん!!」
それに呼応する様に、槍を退いた怜奈が叫んだ。
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