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頷いた涼介が引き金を絞るより早く、怜奈は新たに口を開いた。
「撃っちゃ駄目!」
その声に何とか反応した涼介は、銃を退いて銃口を天井へ向けた。
怜奈の制止の意味が分からず、涼介を困惑させる。
「今撃ったら、他の二人に居場所を知られちゃう」
それが理由だ。
灰谷に銃の使用を禁止した時の理由と同じく、今は敵に居場所を悟られてはならない。
各個撃破の方針自体は間違いではないが、今の状況では、一歩間違えば挟撃される可能性がある。
数の上で互角というのは飽く迄、涼介を頭数に入れればの話だ。
今の状態では、その可能性が起きてしまったら致命傷を負い兼ねない。
「けっ、意外に冷静じゃねーの」
心底、面白く無さそうな顔をしたヘマハは、頭を掻いてそう言った。
「連携出来る環境を作っちゃ駄目。今の環境で戦うのよ」
頷いた涼介は銃をポケットに仕舞い、ヘマハへ躙り寄る。
挟み撃ちをされているヘマハは、大して焦っている様子もなく、怜奈の後ろに横たわる夜宵を睨み付けた。
「俺達の得意技まで喋ったのか、うざってぇ餓鬼だな」
怜奈はクスッと笑い、その微笑を左手の握り拳で隠す。
突然笑い出す怜奈を、ヘマハは怪訝そうな顔で見詰めた。
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