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怜奈の好意を素直に受け取らない涼介に対し、浅葱は一人納得した様に頷いた。
「……分かった」
……何が?
嫌な予感をせずにはいられない怜奈は、不安を隠しきれない面持ちで浅葱を見詰めた。
「…………」
涼介も浅葱の自信満々な表情に、不安しか覚えない様だ。
少し後退り、浅葱と距離を取る。
浅葱はあまり意に介す事なく、部屋の中央で正座をして、涼介を見上げて膝を二回叩いた。
意味が分からない涼介は首を傾げ、浅葱を見詰める。
「……膝枕と子守唄、耳掻きは無いから割愛。それでも男はこれでおやすみ3秒」
怜奈は思わず吹き出し、廊下に面した襖の見張りを開始する。
頭を掻く涼介は、呆れた口調で背を向ける怜奈に話し掛けた。
「突っ込んだ方が良いのか?」
「突っ込むのも好意を受けるのも、ご自由に」
平静を装った口調だが、その肩は小刻みに揺れ、笑いを堪えているのは明白だった。
涼介は浅葱の好意は受けず、部屋の奥へ行って畳に腰を下ろす事にした。
「……ねぇ、涼介さん」
気配で涼介がその場に落ち着いた事を察した怜奈は、少し悩んだ様な口振りで話し掛けた。
右手で左腕の肘を持ち、槍を腕の中に収める。
「何だ?」
それに応える涼介。
少し離れた位置で自分の前に座る浅葱と、更にその先で立って見張っている怜奈を視界に入れた。
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