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自覚が無い為か、涼介は曖昧に言葉を濁した。
涼介の話を黙って聞いていた怜奈達だったが、浅葱は自分が気になった事を聞く。
「……だった?」
今は違うのか、浅葱はそれが気になったらしい。
頷いた涼介は少し長くなる、と前置きをしてから話し始めた。
「俺は高校卒業と同時に警察学校に入って19歳で卒業、巡査の階級を貰った。当時は……嬉しかった」
見張り続けながら話を聞く怜奈と、自分を見詰めている浅葱から、一瞬視線を外す涼介。
一息吐いた後、再び話を続けた。
「結婚もして、子供も出来て……幸せだった。暫くして、俺は交番勤務から機動隊への転属が決まった」
「……機動隊?」
首を傾げる浅葱に対し、背を向けたままの怜奈が疑問混じりに口を開いた。
「暴走族とか追っ掛けるの?」
それを聞いた涼介は、少し口元を緩ませて首を振った。
「交通機動隊とは違う。んー……、何て言えば良いのかな」
頬を掻いた涼介は、考えを纏め、僅かにこちらを見ている怜奈に視線を向けた。
「デモが起きた時に、盾を持ってる警官隊がいるだろ?あれだよ」
あぁ、と頷く怜奈。
日本でデモというのは馴染みが無いが、サッカーの試合でフーリガンと衝突しているニュースを思い出し、それと一致させたのだ。
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