過去と未来の間

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それなら指揮官が立てた作戦を意地でも成功させる。 その方が穏便に事が進む。 指揮官が保身に走るのと同様、部下も保身に走る。 「結局止められなかった俺は、突撃小隊の一人として、作戦に参加した」 命令が下り、第一小隊が突入する為にバスへ近付いた。 幸い、バスの窓には全て幌が掛けられており、犯人が小隊の接近に気付く事は無かった。 第一小隊の突入と同時に、涼介が居る第二小隊も続けて突入する。 入り口扉のガラスを割った第一小隊が突入した、その瞬間…… 「犯人が突然の昏睡状態にでも陥らない限り、そりゃ爆発するわな」 バスは爆発、作戦は失敗。 マスコミによって大々的に報道され、運転手、乗客、犯人、そして第一小隊の隊員、合わせて31名の死者を出した警察の失態は非難の的となった。 「家族を失った俺に、警察は何をしてくれたと思う?」 そう言って発言を止めた涼介。 答えるまで喋る気は無いのかも知れない。 怜奈と浅葱はそれぞれ悩み、やがて口を開いた。 「慰謝料くれたとか?」 「……異例の二階級特進」 それを聞いた涼介は、首を振って溜め息混じり呟いた。 「その逆だよ」 怜奈達の発言に呆れている訳ではなく、当時の警察に呆れているのだろう。 涼介の口調から、怜奈はそう捉えた。
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