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「逆?」
意味が分からなかった怜奈は、そう言って首を傾げた。
浅葱も同様に首を傾げる。
「給料減額、ボーナスカット、一階級降格処分。それが俺に与えてくれた物だ」
「……何で?」
私も静と同じ事を思った。
静みたいに言葉に出来なかったけど。
浅葱の疑問に答える為、涼介は口を開く。
その顔は怒り疲れたのか、微笑みとも捉えられる顔だった。
「理由は作戦の妨害工作を行った。その所為で作戦が失敗したと、大っぴらに吹いて回ったんだ」
そんな出鱈目……
怜奈は思わず心の中でそう思った。
思わずにはいられなかった。
そんな出鱈目がまかり通ったから、涼介は苦しんでいるんだろう。
その苦しみを、怜奈は想像出来なかった。
「俺は……、スケープゴートにされたんだよ」
背負う必要の無い罪を背負わされた涼介。
その背中には、どれだけの重しを背負っているのだろう?
「……辛い事聞いて、ごめんなさい」
突然、浅葱が言葉を発した。
易々と聞いた事を後悔しているのだろう。
だが浅葱が聞かなかったとしても、怜奈が聞いていた。
怜奈は襖から目を離し、浅葱に近寄った。
「お前らが気に病む事は無い。お前らになら喋って良い、そう思ったから話したんだ」
浅葱の横に立つ怜奈の顔を見た涼介は、静かにそう言う。
怜奈も浅葱と同じく、悲しそうな顔をしていたのだろう。
自分の顔は見えないが、怜奈は何となくそう思った。
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