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医師は息を飲んで言った。
「アーサーさん…。
お話があります。」
「…………。」
イヤな予感がした。
こういう時の俺の予感は大抵当たる。
病室をあとにし、
違う部屋に行った。
「アーサーさん…。」
心臓が止まるんじゃないかってくらいドキドキしてる。
頼むから…予感はずれろよ………。
「大変申し上げにくいのですが…
本田さんはあなたの記憶だけ失ったようです。」
あぁ……、
目の前が真っ暗になるってこういう事なんだ…。
「事故に遭う前に
一緒にいませんでしたか?」
「ぇっ……。
一緒に居ましたけど…。」
「やはりそうですか…。
こういうケースはごくまれにあるんです。
印象が強すぎて事故のショックで忘れてしまうんです。」
「………。」
あの時…
俺が菊の事を理解していれば、こんな事にはならなかった―――?
悔やんでも悔やんでも
悔やみきれない…。
過去が変わるなんて事、起こるわけないのだから――――。
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