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屯所に戻ると、薫さんがお握りとお茶を用意してくれていた。
「薫さん、手伝わなくてすみません・・・」
こんな時間に、一人で大変だったろう。そう思って声をかけた。
「ええよ、それよか、好乃はんの用事はどないなったん?大丈夫どすか?」
「はい。とりあえずは、ですけど」
「そんならええ。わては慣れとるさかい、気にせんでええよ。好乃はんも疲れはったやろ?お茶飲むとええよ!」
「・・・あり、がとうございます」
優しく微笑んだ顔が、若い頃の母と重なって見えた。
写真で何度も眺めた、温かい笑顔だ。
「どないした?」
「い、いえっ!じゃあ、私戻りますね。すみませんけど、宜しくお願いします」
目頭が、急に熱くなり。
振りきるように立ち上がると、沖田さんの部屋へと向かった。
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