其の八

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屯所に戻ると、薫さんがお握りとお茶を用意してくれていた。 「薫さん、手伝わなくてすみません・・・」 こんな時間に、一人で大変だったろう。そう思って声をかけた。 「ええよ、それよか、好乃はんの用事はどないなったん?大丈夫どすか?」 「はい。とりあえずは、ですけど」 「そんならええ。わては慣れとるさかい、気にせんでええよ。好乃はんも疲れはったやろ?お茶飲むとええよ!」 「・・・あり、がとうございます」 優しく微笑んだ顔が、若い頃の母と重なって見えた。 写真で何度も眺めた、温かい笑顔だ。 「どないした?」 「い、いえっ!じゃあ、私戻りますね。すみませんけど、宜しくお願いします」 目頭が、急に熱くなり。 振りきるように立ち上がると、沖田さんの部屋へと向かった。
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