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提灯も持たずに屯所の門をくぐり、目的地の方へと走り出す。
背中に、じわりと汗が滲む。
暑いからではなく、嫌な汗・・・
と、その時
「わあああっ!!」
「・・・橘、どちらに?」
「や、山崎、さん」
目の前に、まるで風のように現れたのは、山崎さん。
彼は土方さん達と向かわずに、屯所に残っていたのだろうか。
「今、ここから出られては困ります」
「・・・っ、でも、私行かないと」
雲がゆっくりと動くにつれて、目を凝らさなければはっきり見えなかった山崎さんの瞳が、雲の合間から月の光に照らされてキラリと輝く。
「・・・何か、ご事情があるようですが。貴女が無闇に動かれると私が副長にどやされます」
「・・・」
山崎さん、ていつも土方さんの言いつけ守ってるよね。
真面目というか、融通がきかないというか。
「・・・沖田さんの、体に関わることでも?」
「!!」
仕方がないと、そう一言言うと、さっと顔色を変え少し考えているようだ。
「・・・分かりました。私が護衛いたしますので」
「ありがとうっ!」
こうして、彼らを追うようにして私と山崎さんは歩みを速めた。
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