其の八

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提灯も持たずに屯所の門をくぐり、目的地の方へと走り出す。 背中に、じわりと汗が滲む。 暑いからではなく、嫌な汗・・・ と、その時 「わあああっ!!」 「・・・橘、どちらに?」 「や、山崎、さん」 目の前に、まるで風のように現れたのは、山崎さん。 彼は土方さん達と向かわずに、屯所に残っていたのだろうか。 「今、ここから出られては困ります」 「・・・っ、でも、私行かないと」 雲がゆっくりと動くにつれて、目を凝らさなければはっきり見えなかった山崎さんの瞳が、雲の合間から月の光に照らされてキラリと輝く。 「・・・何か、ご事情があるようですが。貴女が無闇に動かれると私が副長にどやされます」 「・・・」 山崎さん、ていつも土方さんの言いつけ守ってるよね。 真面目というか、融通がきかないというか。 「・・・沖田さんの、体に関わることでも?」 「!!」 仕方がないと、そう一言言うと、さっと顔色を変え少し考えているようだ。 「・・・分かりました。私が護衛いたしますので」 「ありがとうっ!」 こうして、彼らを追うようにして私と山崎さんは歩みを速めた。
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