其の八

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息を切らしながら、それでも休むことなく明りのない夜道を走り抜けていく。 山崎さんは私に危険が及ばないように先導しながら素早く向かう。 徐々に薄ら雲がかかり、それでなくとも見えにくい足元がさらに視界を奪い去る。 「大丈夫ですか」 「はあはあ・・・、大丈夫です」 それよりも早く。 そう思う一心で、“そこ”にたどり着いた。 「橘っ」 入口を見張っていたのだろうか、声をかけてきた隊士にはまだ戦闘の色がない。 「近藤さん達は」 「中だ。人数が少なすぎるっ、中は戦闘だ。丹虎は白だったのか・・・」 「え、土方さん達はまだ来ていないんですか?」 私は声を荒げるようにそう答えた。 だって、ちゃんと助言したのに。 何かあったのではないか、そう不安がよぎる。 「好乃っ!!」 が、聞きなれた声が耳に届きその不安も杞憂(きゆう)になる。 土方さんだ。 安堵する一方で、疑問が応じる。 「何してるんですかっ!こっちが黒だと言ったでしょう!」 気が付けば激怒していて、土方さんといえば、ちらりと目をやった後、そんな私を構うことなくに中へと消えてゆく。 私も護身用に忍ばせてある懐刀を手に取ると、中へと急ぐ。
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