325人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
息を切らしながら、それでも休むことなく明りのない夜道を走り抜けていく。
山崎さんは私に危険が及ばないように先導しながら素早く向かう。
徐々に薄ら雲がかかり、それでなくとも見えにくい足元がさらに視界を奪い去る。
「大丈夫ですか」
「はあはあ・・・、大丈夫です」
それよりも早く。
そう思う一心で、“そこ”にたどり着いた。
「橘っ」
入口を見張っていたのだろうか、声をかけてきた隊士にはまだ戦闘の色がない。
「近藤さん達は」
「中だ。人数が少なすぎるっ、中は戦闘だ。丹虎は白だったのか・・・」
「え、土方さん達はまだ来ていないんですか?」
私は声を荒げるようにそう答えた。
だって、ちゃんと助言したのに。
何かあったのではないか、そう不安がよぎる。
「好乃っ!!」
が、聞きなれた声が耳に届きその不安も杞憂(きゆう)になる。
土方さんだ。
安堵する一方で、疑問が応じる。
「何してるんですかっ!こっちが黒だと言ったでしょう!」
気が付けば激怒していて、土方さんといえば、ちらりと目をやった後、そんな私を構うことなくに中へと消えてゆく。
私も護身用に忍ばせてある懐刀を手に取ると、中へと急ぐ。
最初のコメントを投稿しよう!