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「ありがとう。大事にするからさ、さぁ泣き止んで!急いでるんだろ?飴でも食ってくか?」
俺はメリ子の小さな口にピンク色の飴玉を押し込んで、また涙と鼻水を拭く。
「ありがとう。おじちゃん。帽子似合うね」
「俺こそ、ありがとう」
メリ子のまん丸ほっぺを撫でて、俺の頬も自然とゆるむ。そしてつられて、メリ子も満足そうに微笑む。
「おじちゃんバイバイ。またね」
「ああ、またね」
一文字眉毛を八の字に下げて、笑顔で窓からすり抜けて行くメリ子に手を振る。
またアイツすり抜けて行ったけど、あんな早苗イリュージョンを見せられた後だ。もうなんとも思わない。死期が近いとこんなこともあるんだろう。そう思って空を眺める。
赤い粒は、どんどん小さくなり、見えなくなった。
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