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青い空がきれいだ。
風も弱くて雲がゆっくりゆっくり流れている。
こんなにいい天気なら息子と公園で遊んでやりたいな。俺が、癌じゃなかったら。
「ちょっとおじちゃんっ?……おじちゃん、おじちゃんおじちゃぁぁあんっ!!」
小さな手で叩かれ、はっと気がついた。いけない。あまりにも意味不明すぎてつい現実逃避してしまった。
「えぇと……、なんだっけ?……欲しいもの……だっけ?」
いくら現実逃避しても確かにメリ子とやらはここにいる。ペチペチ叩かれた手の感覚もしっかりある。窓はすり抜けたくせに、なんなんだこの子は?幽霊のたぐいではないのか?
「そうよっ。サンタクロースの孫のメリ子がおじちゃんの欲しいものを一つプレゼントするのよ。早く早くっ」
「……孫娘さんですか……」
いろいろ腑に落ちない点もあるが、今のところ害はなさそうだし、こんな小さな子がどうこうできるとは思えないが、とりあえず死ぬ前にこんな体験も楽しんでおこうか。
「えっと、癌を治してください、とか……ダメ?」
「ダメよダメ。欲しい物って言ったでしょ?あたしは物しか出せないのっ」
なんだよ。今の俺にはあまり役に立たなそうじゃねぇか。
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