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「涼子、どうしたの、帰ろうよ」
アタシは友人の声にはっと顔を上げる。
いつの間にか授業も終わっていたらしい、周りのクラスメイトは帰り仕度をしている。
「涼子、最近おかしいよ。話しかけても上の空だし」
この子の世界はまだ崩壊していない。
「ごめん」
まだ本当の世界を見ていないこの子は幸せだ。
本物の世界はこの上なく味気ない。
見ていない証拠に、ほら、瞳がきらきらしている。
アタシの瞳はきっと、スモークがかかったように濁った色合いを見せていることだろう。
アタシは気付いてしまったのだ。
「あ、ねぇカラオケいかない?新曲にね、harukaの曲が追加されてるのよ」
「あ…」
「なに?用事ある?」
別に何もない。
でも、行くことに少しの抵抗があった。
それでも…今までのアタシのように振る舞わなければならないため、のろのろと後をついて行った。
この子の名前、なんだっけ…。
アタシは考えながら歩く。
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