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「…誰?」
「貴女こそ誰?此処に人が来るなんて久しぶり」
やっと話ができる人が見つかったと、理沙は嬉しく思い駆け寄った。
そこには、全身毛で覆われた、まるで猫娘のような子供がいた。
「こんなだから、外に出ちゃだめなの」
理沙は随分前に読んだ本に、生まれつき全身が動物のように毛に覆われた人がいるというのを読んだ事を思いだす。
「ずっと此処にいるの?」
「ずっと此処にいるの」
あの隠し通路はこの子の為なのかもしれない。
この子を隠し育てる為の牢屋なんだと、理沙は理解した。
「違うわ」
「何が違うの?」
「此処は私の場所じゃない、あの子の場所よ」
心を読まれたかとひやっとする。
「あの子って?」
「直ぐに会えるわ。会えるけど会いたいの?」
クスクスと笑い、きらりと光る目は細く縦になり、
「止めないけれど、会いたいの?会いたいの?」
次第に恐ろしくなり、理沙は無言でその場を立ち去った。
背後からはまだ、会いたいの?と問う声がしていた。
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