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―どうして?―
「何故?何故ここじゃいけないの?」
金木犀降り積もる頃、彼女に都へ行こうと告げた。
僕なりの求婚だったつもりが、彼女を怒らせてしまったらしい。
「この場所はいけなくはないさ。しかし、僕は仕官する、都で帝に仕えるんだ。君にも、来てほしい」
金麗は何も言わず、こちらを見てもくれない。
どうすればいい?
どう言えば彼女は気に入ってくれる?
この時代、仕官にならなきゃまともな生活はできない。
彼女と、いつかは産まれてくる子供の為にも、良い仕事に就かなければいけない。
「考えてくれないかな。僕は真剣に君との将来を考えているんだ」
未だ金麗はしかめっ面で、でもそんな顔も彼女の一部なんだと愛おしく、可愛らしく思うんだ。
「この場所がいいの」
「都は何故駄目なんだい」
「私はここにいるの。此処で、ずっと貴方といるの」
「落ち着いて。ゆっくり考えてくれればいいから…試験の結果が分かるまで」
僕はそう言うしかなかった。
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