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† † †
依は目を覚ます。
起きあがると同時に己の胸に穴が開いていないかを確かめた。
勿論夢であるから開いている筈はない。
ただ、胸を突き抜ける痛み、中で蠢く感触、小枝がひっかいた内壁の…全て生々しく残る。
「嗚呼、またハズレ」
そう、こんな声だった。
そう思った後、ばっと後ろを振り返る。
夢の中の少女が今、水の上にふわりとつま先をちょこんとつけた状態で浮いている。
「あの人もダメ、この人もダメ」
ひらりひらりと落とす栞。
「どの人なら大丈夫なのかしら」
最後の一枚を水に浮かべ、ふぅと溜息をつく。
「私は傍にいてほしいだけなのに」
すいっと依に近づき、その細い指で依の顎を捕らえる。
「さぁ、次を見せてちょうだい」
「やめんかネズミが。毎度うちの者を巻き込みおって」
「あら、貴女の物なの?知らなかったわぁ」
くすくすと笑う少女の目線、その先にはカサネが、腕を組み不機嫌な顔で立っていた。
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