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なげしの手がやっと差し出されたアイスの棒を掴むと、満面の笑みを夏人に向け小首を傾げてみせた。
「ありがとう。なっちゃん!」
なげしの笑顔を尻目に、手を繋いだまま歩み続ける夏人の伸びた長い髪を時々ムッとした暑い風が撫で過ぎ、やがてなげしのスカートを揺らす。
母、里子に「切れ切れ」と言われながらも長いこと椅子に座らされるのが嫌いでジっとしていられず、すっかり切れずじまいの夏人の長い髪は、もはやトレンドマークとなりつつある。
「早く食わねーと溶けるぞ~」
そんな幼い彼なりの照れ隠しなのか、呆れた眼差しで気だるげな棒読み状態の声を背中越しに放つと、不器用な夏人の照れや愛情表現だと分かっているなげしは、無性に嬉しくなり、ぎゅっと夏人の手を握り返した。
アイスがついてベタつく筈の手も、いつの間にか気にならなくなっている。
やがて夏人もなげしが握り返してきた手を、再び強い力で握り返すと、そっぽを向いたまま少しだけ頬を赤らめ、彼は素っ気なさを繕った。
「なっちゃん!」
急になげしが明るい声で夏人を呼び、走って顔を覗き込みに来ると、面喰らったように驚いた顔で立ち止まり身体を仰け反らす夏人。
「はい、アイス半分こ!」
なげしが無邪気に笑顔をみせ、アイスを口元に差し出してきた。
「い、いいよ、全部食えよ」
夏人が戸惑いながらポツポツと呟き、わざと迷惑そうに眉をしかめる。
眩しい太陽の下、なげしが差し出すアイスは流石に今にも溶けそうだ。
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