番外編 いち。

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*** 「こんな店、よく知ってたね」 大雨の中並んで、ようやく座れたのは一時間後。 スズは丸い黒目がちな瞳をくるくるさせて、広くもない店内を見渡している。 見渡せば女の子ばっかりで。 でも、どう見たってスズが一番可愛い。 華奢な体は服を着ると鎖骨がきれいに見える。 そこから伸びた腕は、棒切れのように細くて。 肩までの艶々した髪と赤い小さな唇…。 ロールケーキよりもそっちのがウマそうだ…。 「ヨウ、食べないの?」 「えっ?」 スズを眺めていたら、とっくのとうに俺の前にはレモンのロールケーキが置かれてた。 「おっ、ウマそう!」 これが食べたかった。 レモンの皮がアクセントに入ってる、ほろ苦ロールケーキってやつ。 「スズはどんなの?」 四角いテーブルの斜め向かいで食べていたスズの皿をのぞく。 「私のはオレンジのロールケーキ」 「またぁ?」 呆れたけどスズらしくて顔が綻ぶ。 .
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