番外編 に。

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───空が青い。 芝生に寝転がって目を瞑っていても、太陽の眩しさは瞼を透かして目の奥に届く。 薄らと汗をかいた額にふわっと撫でるような風が吹いた。 今日みたいな晴天は気持ちまで穏やかにしてくれる。 ここはお気に入りの場所で、昼休みは買ってきたバイク雑誌を枕代わりに、昼寝をするのが日課になってきている。 今、勤めている整備工場は、母親と暮らすアパートからも近いし、以前も同じ仕事をしたことがあったから、募集の記事を見つけて即決した。 引っ越してきて最初に見つけた仕事先だったけど、運が良かったと思う。 年老いた社長は寡黙だけど優しくて、僕を孫のように扱ってくれるし、他の従業員だってあれこれ詮索しない気のいい人たちばかりだ。 僕の拭い去れない辛い過去の記憶を、少しは忘れることができる環境、とでも言えば分かってもらえるだろうか。 それぐらい、ここは居心地のいいところだ。
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