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フォルダの中身は見ないまま、私の指は動かなかった。 ただただそのフォルダ分けされた名前の羅列を眺めた。 私はこんなところで何をしてるんだろう。 「紗亜耶…。」 その時聞こえた声はトイレから帰ってきた徹の声だと言うことはすぐにわかった。 なのに、すぐに顔をあげられないのは、極端な怒りと悲しみが一気に押し寄せたからだった。 私だって女だ。 傷つくときは思いきり傷つくし、ヒステリックにだってなるときはある。 そんな私をきっと彼は知らない。 「あなたがついた嘘は私をバカにする嘘?それとも優しい嘘?」 冷静な自分はもういない。 「紗亜耶、誤解だよ。俺は紗亜耶しか愛してない。」 「私なんか愛さなくていい。私は愛される資格なんてない。」 彼の額からは大量の汗が吹き出している。 こんな彼を私も知らなかったのだ。 「そんなことないよ。俺はいつも君といただろ。」 最後の最後で、私は彼の本当の姿が見れたのだ。 「だって私はあなたのコレクションのひとつにされてたことに気がつかなかったんだもの。」 彼は椅子の背もたれを強く握りながら棒立ちでぴくりともしない。 ただひたすらに額からは汗が流れ、口がもごもごと動いていた。
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