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「男に浮気されてた。ただそれだけ。んで、今お別れしたの。」
蓮王は私の涙にひとつも動揺せず、絆創膏を貼った。
「捨てられたんだな。」
心をえぐるようなその言葉は、脆弱な私の体を千切っていく。
「俺も昔飼い主に捨てられた。」
「え…?」
私は今朝の蓮王の後ろ姿を思い出した。
あのなんとも言えない背中に感じた色は、そこからきたんだろうか。
「同じようなもんだ。ただ忘れるように努力して、そのときの自分をなかったことにするために、新しい自分になればいいんだ。」
「私そんなこと知らないで、捨てるなんて簡単にあなたにいっちゃった…。ごめんなさい。」
自分が今現在置かれているこの状況を、そのときの蓮王に重ねる。
憎くて、悲しくて…。
そこには何も生まれない。
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