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あの疑いの晩から、タバコの量は一日一箱程度に増えた。
自分の弱さに悲しくなりながらも、この人差し指と中指はタバコを離してはくれなかった。
丸い椅子に体育座りをすると、自分が世界から孤立して、置物にでもなったような気がする。
だから好きだ。
ちゃんとこの体制ができるように、メタボには気をつけよう。
そう思うくらい、年中やっている。
朝9時の空はその日一日の生まれたてで、とてもすがすがしく、それでいてやけに重厚だった。
そんな空が私を一人惨めにさせた。
この歳になって、浮気されて、会社でもいい女のふりをしていた、彼のために服装を変え、髪型も変えた。
そんな事実が恥ずかしくてたまらなかった。
私はそんなことに恥じらいを感じてしまうような、かわいげのない女だ。
そんな女を心から愛してくれるはずがなかった。
愚かな自分に心の中で笑った。
「ちょっとー。タバコやめてくれないかな。俺鼻利くから、タバコの煙強烈なんだよね。」
蓮王は、シャワーの雫をこぼして戻ってきた。
とても美しい姿だった。
顔についた雫を拭う手が綺麗に光、洗いたての髪の毛からすっきりとしたシャンプーの香が辺りに漂う。
それだけで少しだけ心が落ち着く感じがした。
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