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「かーわいい…。」
蓮王が不思議そうな顔でこちらにやってきて、鼻をひくひくと動かす。
「人間はこんなもんほしがるのか。なんかかわいそうだな。物欲の範囲が広いって。あんまり満たされないのもそのせいだな。」
めずらしく的確なことをいう蓮王に子供っぽさを見られたような気がして腹が立った。
「人間はね、欲求が強い分喜びも多いってことなの。犬みたいに、その辺の枯れ枝もって帰ってくることだけに喜びを感じるようなそんな単細胞じゃないんですー。」
そんな皮肉にも彼は何も反応しない。
青い瞳のクールな目は、私を見据えてあざ笑うかのようだ。
「んじゃあ買えばいいじゃん。」
「馬鹿ね、こんな高いもの買えるわけないでしょ。ただでさえあんたの服の出費で今月厳しいってのに。」
「へー。5万円ってそんなに高いの?」
「人間になるんだったら、お金の価値観も学ばなきゃね。」
家路につくころには、すっかり辺りは早めの夕日を迎えていた。
その夕日を見つめていると、荷物を抱えたしびれた腕のことさえも忘れてしまうほどだ。
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