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「なぁなぁ、今日の夕飯何。」 「まぁたご飯の話。ほんと食べ盛りだね。」 こんな会話が、少しだけ心地がいい。 そういえば、徹と付き合っていたときはあまりなかったっけ。 きっと自分をさらけ出せなかった自分のせいなんだろうけど…。 今の自分じゃダメだって勝手に思って、一生懸命自分作りに励んでた。 だからだろうか、なんでも頷いてればよかったように思った。 それがいい女だと、勘違いしてたんだろうか。 徹に対して、皮肉一つ言ったことないし、もちろん喧嘩なんてしたことない。 険悪なムードになったのは本当に最初で最後のあの晩だけ。 なかなか滑稽なカップルだったのかもしれない。 私はきっと、優しさだけでそれを繋いでいた。 彼のほうはただ私を駒にして遊んでいただけなのだろうけど…。 こんな風に何気ない会話をしたことが一度でもあっただろうか。 「明日紗亜耶会社か?」 「うん。」 「んじゃ俺暇だなー。鍵置いてってな。」 「えー。合鍵ないんだから、ちゃんと家にいてよねー。」 「はいはい。」
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