第零章

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 俺は死んでいく。半身を失って人間は生きていられない。世界から色が消えてモノクロに塗り替えられる。無機質な世界。そこに俺は沈んでいく。  悔しい。どうしようもなく悔しい。別段俺が殺されたことがではない。あ、いやでもそれはやっぱちょっとある。  ただ、こんな結末になってしまったのがたまらなく悔しい。俺達はどうしてこうなったのだろう。黄金の記憶を辿る。醜く歪んだ今と比べる。皆、死んだ。そして俺も死ぬ。あいつも報われない。  最悪なエンディングじゃないか。三流のシナリオだ。この終わりには何もない。  ふざけるな!そんなの許せるか!俺たちのシナリオを三流作家になんか任せてたまるか!俺たちはそんな安い物語になんてならない!  抗いたい。この運命に。闇の底に沈められた俺達の終わりに。  藻掻く。消失していく意識の中、俺は必死に泳ぐ。こんな結末は許さない。俺達は、誰も笑っていないんだ。  どこで間違えた。俺は、俺達はどこで間違えたんだ。思い返せば全てが過ちで全てが正しかった気もする。  やり直したい。俺たちがこうなる前の人生を。俺達が報われる人生を。もう一度、せめて救われる結末を。いや、やっぱ最高の結末がいい。望み得る限り最良を。  藻掻いた。泳いで、泳いで、泳いで、その先に、モノクロの世界で、唯一の輝きを見た。  闇の底を泳ぎながら、今にも消えそうな意識で、必死に手を伸ばして、その光を、掴んだ。  『貴様は何を望む』  光は、双剣を持った男だった。
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