お城からの招待

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「それにお前は想像の中の王子様が好きだったんじゃない。ただ自分を愛してくれて尚且つ身分の高い男に恋い焦がれてた。王子っていう肩書きが好きだった…ただそれだけだ。」 「違う…。」 「違わないね。」 「違う!私は本当に王子様が…!」 「じゃあ俺を見ろよ。お前の好きな王子様だろ…?」 クライドは私の顎に手を添えて顔を上げさせる。 その顔は真剣な顔つきで、私は目が潤むのがわかった。 それに気がついたのか、クライドは手を離して軽くため息をつく。 そしてろうそくの火を消すと背を向けて布団に潜り込んだ。 「…まぁいい。今日はここで寝ていけ。どうせ部屋までの道なんざわからねぇだろ?」 そうとだけ言うと静に黙り混んでしまった。 私は座ったままただその背中を見つめていた。 暫くすると小さな寝息が聞こえてきて眠ってしまったのだとわかる。 私も起こさないようにゆっくりと布団に入る。 夢にまでみた本当に本当の王子様…。 でもその王子様は夢の中の王子様とは遥かにかけ離れている。 そう、私はただ王子様という地位の人とお姫様に憧れただけの普通の女の子。 本当は王子様が好きなんじゃなくて、王子様という肩書きが好きだっただけ…。 知ってしまった現実と気持ちはあまりにもショックすぎて、私は声を押し殺して泣いていた…。
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