追放

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マスターとお城に戻ってから月日が経ち、私はお城に来て四ヶ月目になろうとしていた。 マスターは栄養失調だっただけとのこで、最近は徐々にだが元気になってきている気がする。 毎日マスターに会いにいったあと、私は最近お気に入りの場所に向かう。 「やっぱりいた。」 「…また来たのかよ…。」 クライドは小さくため息をつく。 お気に入りの場所とは依然見つけた薔薇園の奥にある一室である。 もう秋だというのにここの薔薇だけは綺麗に咲き誇ったままである。 「来ちゃいけなかったの?」 「いいか。俺は日々の国務の癒しにここに来てるんだぞ。」 「でも今日もちゃんと用意してあるじゃない、ティーカップ。」 私はテーブルの上に伏せられてあるカップを指差す。 最近は私の分までわざわざ持ってきてくれているのだ。 「自分の分だけ持ってきてるのも卑しくて嫌なだけだ。」 「ってことは私が来ることは了承済みなんでしょう?」 「…。」 小難しい顔をしたままクライドは本を読む。 私はクライドのカップに紅茶が入っているのを確認してから自分の分の紅茶をそそぐ。 「あ、今日はオレンジなのね。いつも果物系統が多いけどハーブ系統は好きじゃないの?」 「ハーブはあまり好きじゃないな。ハーブの方がいいのか?」 「ん、そんなことないわ。私も果物系統の紅茶は大好き。」 そういうとクライドは少し嬉しそうな笑みを浮かべる。
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