ありふれた奇跡の物語

アップルレンジ

男達の目的は、ぬいぐるみの山から出たスラッとした脚。

ぬいぐるみ達の奥へ精一杯進もうとする度にヒラヒラと舞うミニスカートの裾に「もう少し！」「見えそう！」等とどよめく男達。

この村の女性は皆、長いスカートを履いている。

おそらく他所から来た旅人であろうその女性を見ようと男達は集まったのだ。

楽しそうにする男達とは裏腹に、何か買うわけでもないのに店に詰め掛けられた店主は不機嫌そうに人だかりを睨みつけている。

ここは、そんな平和な田舎の村。

『アップルレンジ』

これからこの村で起こる奇跡を、この時、誰１人として知る者はいなかった。

もとよりこの村には、奇跡が溢れていたのだから…。