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「シラタニ・レンジ・・・。レンジなどという家は知らんな。」
そんな事を言った彼女を、レンジが嘲笑う。
「苗字はシラタニだよ。名がレンジ。こちら風に言い直せばレンジ・シラタニかな?」
「やはり異国者か。姫の命を狙う汚らわしい蛮族め。」
「早とちりも良い所だよ、阿呆が。」
その言葉を聞いた瞬間、騎士隊長の気迫がドッと増した。
姫の護衛という立場、恐らく、他人から直接バカにされる事など無かったはず。
彼女の怒りは頂点に達し、剣を握る指に力が入ったのがレンジからでもわかった。
「貴様。言い残すことはあるか。」
なんと騎士隊長殿、人命を奪う権利すら持っている様だ。
怒りに震えた声が、殺害宣言を下す。
しかし、「言い残すことはあるか。」だって?
俺はここで殺されるのか?
冗談じゃない。
勝手に窮地に陥って、勝手に勘違いして、勝手に人を殺すだって?
冗談ではない!
レンジの心に、ふつふつと怒りが沸騰してきた。
お前のワガママなどで殺されてたまるか。
俺をお前のワガママで縛るな。俺は俺のワガママでしか動かない。
幸いなことに、俺はワガママを貫き通す力を得た。
そして不幸なことに、俺はキレやすい若者だ。
不釣り合いな力を手にした馬鹿野郎だ。
もう知らない。どうなろうが知ったこっちゃない。
お前が悪い。お前が俺の理性を吹っ飛ばしたのが悪いんだ。
だから、
「恨むなよ?」
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