出発

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結局、レンジによる一方的な戦いは1分とたたずに終わってしまった。結果は言うまでもないが、もちろん騎士の全滅だ。 中には炎や雷などを放ってきた者もいたが、レンジの移動速度があまりにも速く、かすりさえしなかった。 きっとあれが魔法なんだろうな、なんて呑気に考えるレンジの戦い方は、それはもうひどいものだった。 凄惨な状況を作り出した、という意味もあるが、ど素人だ、という意味でも。 技術も戦術もなく、力でゴリ押しする。知能を感じさせない、まるで獣のような戦い方だった。 「つまんねぇの。」 テンションが上がりやすく、また冷めやすいのだろうか。 あまりにも呆気ない決着に、レンジは大きなため息を吐く。 周囲に広がる死体を一瞥して、彼は馬車へと視線を向けて歩み始めた。 繋がれているであろう馬はいなかった。なんらかの弾みで逃げたのだろうか。 移動は徒歩だな、と少し憂鬱になりながらも、レンジが馬車の中から地図を探し出すのにそう時間はかからなかった。 ついでに通貨だろうと思われる金貨や銀貨。ビスケットのように見える保存食や水の入っていた筒、それを入れるための袋も貰って、用済みとばかりにレンジは馬車を出る。 「そういえばお姫様は何処にいったんだろ。」
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