58008人が本棚に入れています
本棚に追加
/1045ページ
探すまでもなく、お姫様は馬車のすぐそばに倒れていた。なぜか赤く染まったドレスのおかげで、すぐに発見できる。
「あらら? どうしたんだ? 」
近づいて確認してみると、何やら首元に棒状のものが飛び出ていた。
その形状、見覚えがある。ああ、騎士の隊長が持っていた煌びやかな直剣だ。
「俺が折った時に飛んで来て刺さったのか。ご愁傷様。」
姫を守るための剣に貫かれたその様子は、皮肉に過ぎる。
その様子に軽く鼻を鳴らすレンジの表情は、これっぽっちも同情しているように見えない。
レンジは結局名前もわからなかったお姫様に手を合わせて、形だけのそれが終わると先ほど手に入れた地図を地面に広げ始めた。
地図はどこか芸術作品のようなものだった。イラスト、というよりは絵画なそれには書き込みがあり、きっとこの馬車の通り道なのだろう。
だからこそ、今いる場所がある程度判る。
森の絵が描かれた場所に、道らしきもの。そこには一本だけの線が後付けで書き込まれている。つまり、このどこかに自分の現在地がある。
しかし、不思議だ。
[ストーダの森]
そう地図に書かれた文字は見知らぬもので、けれども読み取れる。何故?
「考えても、わからないか。」
ならば今は現状を変えるべきだと、疑問を持ちながらも、レンジは辺りを見渡してみる。
しかしドラゴンから逃げるために、滅茶苦茶に馬車を走らせたのだろう。地図に記載された道は見当たらない。
最初のコメントを投稿しよう!