出発

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「まずはこの道を探すか。」 レンジは馬車の車輪部分に近づいて、その付近の地面をよく観察する。 すると目論見通り、激しく走らせた馬車の車輪跡が、分かりづらくも残っていた。 これを辿って行けば、地図に書いてある道を見つける事ができるだろう。 「っとその前に何か腹ごしらえでも。」 思えば、数時間ほど何も飲まず食わずでこんな状況。周囲は森であるのだし、栄養補給ができるのであればできる間にやるべきだ。 一瞬、能力で食べ物を創り出すことを考えたが、それは果たして安全だろうか? 最終手段としてはありかもしれないが、代替案があるのであれば使わない方がいいだろう。何となく気持ち悪い気もする。 しかしイリア王国とやらまで何日かかるかわからないため、馬車から入手した保存食もとっておきたい。 そんな事を考えながら空を見上げたレンジの視界に、赤い点が映り込んだ。 幸先がいい。果物だ。見た目はリンゴのように見える。貴重だろう。 レンジはその木の下に行き、そこで跳躍、木の実を2つ素手でもぎ取った。 近くで見れば、ますますそれはリンゴである。野生であるためか、形は歪で鳥に食われた形跡もあるが。 でもまあ、食えるだろう。毒があるのは・・・。ならば鳥が食った形跡もないはず。 レンジは創造の力でナイフを一本創り、それを左手に持つ。そして右手で創った水の玉でナイフもリンゴも一応洗浄。能力で創った水は透明で、飲用にもなりそうだ。 「水をどう確保するか、心配しなくても大丈夫だったな。」
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