出発

8/10
前へ
/1045ページ
次へ
水もまた、代替案があればそちらで飲むが。まあ、馬車の中の水は意外と量があった。数日は行動できるだろう。 それに、能力で創った水というのは、能力で創った食物よりは[軽い]印象を受ける。飲用にするのに、そこまで強い抵抗は感じないだろう。あくまでも[自分ルール]だが。 レンジは洗ったばかりのナイフを右手に持ち替え、リンゴのような果実の鳥に食われた場所を取り除き、それが終わると皮をむき始める。 しかし、そうのんびりとしながらだと考え事に頭が回る。内容は、言語について。 レンジは日本語しか話せないし、読み書きも日本語しか出来ない。 せいぜい簡単な英語を使うのが限界だ。 なのに何故、全く見も知りもしない言語がスラスラと読めるのか。よくよく考えて見れば、先ほどの騎士達との会話もそうだ。互いの言葉が分かっている時点でおかしい。 「まあ文字が理解できる事で困る事なんてないから、ラッキーとでも思っておくか。」 あんまり驚いてばかりだと身がもたないかもしれない。なにせ、これはファンタジーなのだ。タチの悪い、ファンタジー。 レンジは皿を創り出し、剥き終わった果物をのせて、もう片方も剥き始める。 レンジがこの世界にきて、3時間ほどが経過していた。何とも、濃過ぎる3時間だろう。
/1045ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58023人が本棚に入れています
本棚に追加