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彼は、目線を前方のやや遠くへと移した。
そこには先ほど吹き飛ばされて思考がこんがらがったのか、ゴブリンがキョロキョロと周りをみている。
生き絶えてはいない。
それどころかピンピンしているようだ。
このままでは再び襲われてしまうだろう。
最後の頼みの綱は、後者、のみだ。
「吹き飛べっ!」
まるで神にでも祈るような声とともに・・・、
ゴブリンは再び吹き飛ばされ・・・、
木から飛び出ている折れた枝に突き刺ささり、おびただしい量の血液と思われる体液をぶちまけて、腸なのか、胃なのか・・・。
専門家ではない少年には皆目検討がつかないような、激しく損傷した内臓のような物をだらしなく外へ放り出したまま、ソレは動かなくなった。
彼の顔に生気が戻ってくる。
ほぅ・・・。と、まるで暖かいコーヒーを飲んだ後のように息を吐く。
始めての実戦を行った後とは思えないほど、彼の心は穏やかであった。
自然と彼は笑っていた。
それは抑えられない安心感を表したもの。
そして、さらに彼は笑った。
この状況で、笑ったのだ。
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