0、プロローグ

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 始まりはなんだったか? それはとても些細なものだった。  父を、友人を、とても大切なものを奪っていったアイツに復讐したかったんだ。そしてそれは今も変わっていない。  父は感情表現が苦手で、母と比べると子である僕への接し方はかなり冷たかった。それでも、見えないところでそれを悩んでいるのを知って、子供心に僕は父さんも良い人なんだと認識していた。  友人……シウは、ちょっと話して、気があって、良い友人になれそうだなって思って。それからちょくちょく遊びに行って、一緒に剣の修行なんかさせてもらってた。彼には「帰るべき場所」があって、そこに帰る為に色々と方法を模索していたみたいだったけれど、帰り方が分かるまでは一緒にいてやるよと笑ってくれた。  そんな、ちょっと変わった、でも普通の日常を過ごしていたんだ。でも……。  父さんがアイツと戦っていなくなった。  シウも、アイツが呼び出して暴れ出した奴を封印して自分も一緒に消えてしまった。  僕がいたその場に残ったのは、エルフの造った金色の都市が訳も分からぬうちに消滅したところに現れた、後の保護者兼上司もどきの黒髪の男性だけ。  そいつは、父さんがいなくなったって僕に話した奴とちょっと相談して、何を思ったか僕の保護者がわりとして面倒を見るなんていってきた。確かに母さんはあの後すぐ倒れちゃって、まだ十にもならない子供の僕の面倒を見るのは、難しかったかもしれないけど。  それでもそんな事をいきなり言われて受け入れられる筈もなくて、やけになった僕は「じゃあ僕がアイツに勝って父さんを取り戻せばいいんだ」なんて考えた。そんなの無理なのに。
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