取説:其の一

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この声は……。 恐る恐る顔を持ち上げると、机のすぐ脇にそいつは立っていた。 腕組みして私を冷ややかに見下ろしてくるのは、英語教師兼私達のクラスの副担任。 「矢吹…………先生」 スラリとした長身。 癖一つないさらさらの黒髪。 スッと筋の通った鼻。 薄く形のいい唇。 そして……絶対零度のブリザードを巻き起こす、切れ長の瞳。 「クラスの平均点は63点」 「!」 「学年通して、赤点は……一名」 「!!」 「……今日の授業はここまで。テストの直しは来週のこの時間までに提出する事。 双葉さんは放課後職員室に来るように」 私に回復不可能なぐらいダメージを与え、先生はさっさと教室を去っていく。 苛めでしょ? ねぇ、これって苛めでしょ? 「苛め反対ぃぃぃっ!」 イケメンだか何だか知らないけど、私はこの英語教師が大嫌いですっ。 「あは、たまちゃんてば、面白すぎぃ~」 「くくっ、馬鹿だよな」 人の不幸を笑うなっ!
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