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土「お前の名前は?」
?「寒蝉侠華だ。」
いつの間にか部屋に来ていた近藤が、侠華に笑いかけながら言った。
近「侠華ちゃんか。良い名前だな。」
そう言われて、侠華は少し恥ずかしそうに俯いた。
近藤の後から現れた沖田は、侠華の持っている刀をじっと見ていた。
沖「何処で手に入れたんでィ?その刀。」
侠華は刀を握る手をいっそう強くした。
侠「これは私の家に代々受け継がれてきた『龍刻』だ。」
土方はその名前にハッとした。
土(龍刻…?俺の刀と同じ名前!?いや、そんな筈ない。何かの間違いだろう…)
俯いて、考え込んでいる土方を見た近藤は、不思議そうにしていたが、侠華の草履を見て尋ねた。
近「その草履…。侠華ちゃん、何処から歩いてきたんだい?」
侠「細かいとこまで気付く人だな。武州だよ。」
近土沖「!?」
3人は顔を見合わせた。
それもその筈。武州は3人の故郷なのだから。
沖「俺達も武州から来たんでさァ。」
侠「そうなのか!?お前達とは気が合いそうだな。」
笑顔答える侠華に、沖田は少し頬を染めた。
土「お前をここに置くと決まった訳じゃねーんだがな…。ところで、お前は何で江戸に来たんだ?」
土方は煙草に火を付けながら尋ねた。
侠「兄貴を探すためだ。生き別れらしくって、顔は見たことないんだが、兄貴の話はよく聞いた。確か名は………土方…十四郎だったかな?」
近土沖「!?」
あまりにも突然な言葉に、近藤は固まり、沖田は障子から滑り落ち、土方はくわえていた煙草を落とした。
侠華は不思議そうな顔で3人を見ていたが、いきなり目を見開き、土方を指さしながら叫んだ。
侠「……あァァァ!!お前!さっき、ひ、土方十四郎って」
その時土方の頭の中で、全ての違和感が1つに繋がった。
初対面にも関わらず、屯所に連れてきたこと。武州出身なこと。そして、土方と同じ、『龍刻』という刀を持っていること。
土(ということは…マジで……)
深い藍色のつり目に漆黒の髪。顔は整っていて、スタイルも申し分ない。
その容姿は、土方と並ぶと、兄妹であることは明白だった。
近藤が見たことあると思ったはずだった。
やっと思考回路が元に戻った4人は叫んだ。
土侠近沖「こいつが俺(私)(トシ)(土方さん)の妹ォォォ(兄貴ィィィ)!?」
こうして、波乱の日々が始まったのであった。
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