56人が本棚に入れています
本棚に追加
燦々と注ぐ太陽の下、草木の生い茂る大地。
一匹の若いクロゴキブリが両親の手から離れ、旅立とうとしていた。
このクロゴキブリは、後にゴッキーと名づけられることになる。
「きゅー(りりあ、元気でね。頑張るんですよ)」
母であるクロゴキブリが涙を浮かべ、触角で娘の頭を撫でる。
「きゅ!(うん!ぼく頑張るよ!)」
「きゅー!きゅきゅ!(嗚呼りりあ!いい男を見つけるんだぞ!)」
父であるクロゴキブリは涙を流しながら、触角で娘の身体を撫で回す。
「きゅ~(分かってるよ~。お父さん心配し過ぎ)」
「きゅきゅ(さぁ行きなさい。他の女の子にいい男の子取られちゃいますよ)」
「きゅきゅ!(じゃあお母さんお父さん、行ってきます!)」
母と父に背を向け、りりあは羽を広げ、雲ひとつない澄み切った大空へ飛び立った。
「きゅ(行っちゃいましたね)」
「きゅ……(ちょっと寂しくなるな)」
最初のコメントを投稿しよう!