ゴッキーの過去

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燦々と注ぐ太陽の下、草木の生い茂る大地。 一匹の若いクロゴキブリが両親の手から離れ、旅立とうとしていた。 このクロゴキブリは、後にゴッキーと名づけられることになる。 「きゅー(りりあ、元気でね。頑張るんですよ)」 母であるクロゴキブリが涙を浮かべ、触角で娘の頭を撫でる。 「きゅ!(うん!ぼく頑張るよ!)」 「きゅー!きゅきゅ!(嗚呼りりあ!いい男を見つけるんだぞ!)」 父であるクロゴキブリは涙を流しながら、触角で娘の身体を撫で回す。 「きゅ~(分かってるよ~。お父さん心配し過ぎ)」 「きゅきゅ(さぁ行きなさい。他の女の子にいい男の子取られちゃいますよ)」 「きゅきゅ!(じゃあお母さんお父さん、行ってきます!)」 母と父に背を向け、りりあは羽を広げ、雲ひとつない澄み切った大空へ飛び立った。 「きゅ(行っちゃいましたね)」 「きゅ……(ちょっと寂しくなるな)」
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