ゴッキーの一日

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「ゴッキー入れ」 ギギィと金属音が鳴り響き、真っ暗な空洞が現れる。 最初こそ警戒したものの、今はすっかり慣れ、中にぴょんと飛び込む。 人間なら軽く骨が折れているであろう、バァンッと叩きつけられるような盛大な音を響かせる。 それでも傷ひとつつかないのだから、ゴキブリの硬さは驚異的としか言いようがない。 階段を使えればいいのだが、ゴッキーにとっては使い辛くて仕方ない。ゴッキーなりに考えた方法が、飛び込みだった。 「リン」 《分かってます》 大が扉を閉めた途端、明かりが灯る。 赤い小瓶がひとつと保存食が置かれた戸棚と、手作りベッドだけがあるだけの簡素な部屋が照らされた。 大はすぐさまベッドに横たわり、幸せそうに大きく息を吐いた。 大の手に、ゴッキーは触角を巻きつける。 「おやすみ」 「きゅ」 おやすみ、そう言う時の優しい笑みが、ゴッキーは大好きだ。 明かりが消え、ゴッキーは眠りにつく。
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