1人が本棚に入れています
本棚に追加
***
二人とも、ただ荒く肩で息をしていた。
が、ようやく声が出せるようになると、僕は声を張り上げる。
「なにしてんだ馬鹿スズ! 落ちたらどうするんだ!」
間に合ったからよかったけど、もし手が届かなかったらと思うとぞっとした。
「ごめんなさい……」
しゅん、と珍しくスズはしおらしい態度を取る。
それにようやく僕は一息をついた。
「……まあ、いい。で? なんであんなことしてたんだよ」
それに彼女は、空を見上げた。
「手が、届くような気がした」
「手が?」
「うん」
「何に?」
彼女の視線を追い。溜息を吐く。
「花火? 届くわけないだろ」
「はは。そうだね。でも届いたよ」
「あ? 何に」
「これ」
そう言って、あいつは僕の手をぎゅっと握った。
「ね?」
***
――危ないだろう。あんまりうろちょろするなよ。
――うう、ごめんなさい。
でも、えっとね、あのね……また、すずがね。もしすずがアブナイとき、また、助けてくれる?
――まったく。ま、いいよ。お前が危ないときは、また手、伸ばすから。必ず掴めよ。
――うん! わかった。
約束だよ?
ああ。約束。
だからきっと、大丈夫。
この先に何があっても。
もう君の傍を離れないからさ。
変わらないものは、ここにあるから。
END
最初のコメントを投稿しよう!