はじめに

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

はじめに

ようこそ! 当方セカイ図書館へ。 ワタクシ、たまたま手が空いていた坂崎と申します。 ええ。たまたまです。け、けっして年中暇なわけではありませんからね。 さて。まずは本をお渡しする前に説明を。 とはいっても、簡単なものですのでお気を楽に。 あ、ダメです! 気を楽にとは言いましたが、ここは水分補給NGですからね! 本という物はとてもデリケートでして、湿気が大敵なのですよ。言うなれば生き物なのです。 それを理解されていない方が多くてワタクシは非常に遺憾であると共に今後の図書館事情を深く憂いて…… はっ! 話が脱線しました。 ゴホン。それでは説明しますよ。 これからお渡しするのは、ひとつの“世界” こことは違う何処か。 存在しなかった“もし”の終着点。 そこでは、貴方の望んでいたものが全て手に入る。 地位や名声。富、権力、仲間、伴侶――何もかもが。 ……とは言え、今はただの雛形ですがね。 方向性を与えるのは、観測者である貴方自身なのです。 ここまではよろしいでしょうか? では続きです。 この創造されたすばらしい世界で、貴方は“本を提供された記憶”を残すかどうか、選択できます。 そして、これが一番大事なことですが…… この本の代価は、貴方が今まで生きてきた世界。 そして、これからの可能性でもある。 それを代価にいたしますので、もう元の世界には戻れません。 あ、図書館なのに代価はおかしいですって? はは、細かいことはご容赦を。 ほらほら、図書館を利用するときはカードを作るものでしょう? ――さて。ご理解いただけましたかね。 では、話は以上です。 あ、司書はそれぞれ、これに反しない範囲でルールを一つ設けることができますので、予めご了承の程を。 それでは、どうなさいますか? ……はい、はい。分かりました。お気持ちは変わらないのですね。 ならばこちらに…… ああ、そうそう。最後に一つだけ。 「――貴方の行方に、甘い後悔と苦い幸いを」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!