◆一月前

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◆一月前

【一月前】  穏やかに季節の移り変わりを迎えた、桃色の季節。 新しい出発を誰もが迎えて二月目。  落ち着きを取り戻す頃合いに、不穏な風が舞い込んで来た。  その報せを聞くのは学園に勤める教師全員と、学生を代表する生徒会、風紀委員会、そして特別な生徒数人。 「“天魔の国から正式に宣戦布告を、昨日我が国は受けた。 それに合わせて今軍が戦の準備を始めている。 ここにいる者達は軍の準備が整い次第、軍と合流し国の為に尽くすこと”」 「そんな……ここにいるのは、まだ子どもである者もいるのにっ」 「軍はなにを考えているんだっ」 「私たちがいない間、この学園は誰が守る……っ」  口々に非難をあげる教師とは反対に、子どもである生徒たちは様々な表情を浮かべ、教師を見、目の前の人物を見つめていた。 「軍は国のことしか考えていない、勝つことを常に考えて行動する。 この決定はそういうことだよ」  溜め息混じりに言う理事長は、本当は長々と回りくどい文句が書かれている決定書を机の上に無造作に投げ捨てた。 「…………理事長、天魔の国に、私たちの国は勝てるんですか」  呆れた顔をする理事長を真剣な顔で、生徒会会長は、まるでなにも見落とさないとばかりに見つめた。 その質問に、誰もが理事長を凝視する。  理事長は全員を見渡し、ふっ、と息を吐くと机の引き出しに手をかけた。 「勝率は五分五分、と、言いたいが、生憎現状はこちらが不利だな」  いいながら引き出しから出したのは、地図と、なにかが書かれた数枚の紙。 「まずこの国は、天魔の国と、それと同盟を結ぶ竜の国に挟まれている。 あちらの準備は既に整っているだろうから、まずここと、ここが攻められるだろう」  説明されながら示されるのは、二つの国に近い国境の末端。 「そしてここからこう、あちらは攻めてくる」  指は地図上を西に進む。 そして止まったのは、首都――――この国の王が住む街。 中心地。 この国の、命。 「二つの国が挟み込んで、じわじわと攻めてくるだろう。 これに対してこちらは未だに準備は整っておらず、そしてなにより、我が国の力は現在弱っている」  地図から手を離して、次に出したのは引き出しから出した内の一枚。 そこにはとある報告が記されていた。 「我が国は精霊を奉り、精霊の力を借りることで成り立っている。
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