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「‘敵’の侵略を許すな! 奪われることなく、失うことなく、大切なものたちを、私たちが護ろう!
その為に、どうか君たちの力を貸してほしい」
その覇気こもる声音に、誰もが姿勢を正して‘応’と応えた。
全てのはじまりの、先触れ。
◇◆◇◆◇
理事長室で話し合いがされている頃。 緊迫した空気は一転して学園の中は日常と変わらない空気が流れていた。 戦争のことなど、誰もが未だ知らない。
教師が全員理事長室に集まっているため、各学年の学生たちは自習を各教室でして過ごしている。 中には不真面目な生徒もいるが、ほとんどが教室から外には出ていなかった。
教室の賑わいが廊下、そして校舎の外にまで響く中。 どの校舎からも死角になる末端に建てられた六階建ての校舎の屋上に、彼はいた。
危険な屋上を囲う鉄の柵に手を添えて、眼下に広がる桃色に染まる大地を眺める。 季節は『開春花』になってそろそろ二月目。 桃色の花はその盛りを迎えていた。
他校舎を背に、その遠く虚空を呆と眺めるその姿はどこか、今にも消えてしまいそうなほど儚かった。
「ここから飛び降りたい?」
突然別の声が響く。 瞬間突風に彼は目を細めた。
背中に、気配が現れる。
「この柵を飛び越えて、宙を舞ってみるかい?」
がしゃん、と彼の手ごと包み込んで柵を掴む。 その衝撃に柵がぶわぁんと震えた。
「全部、投げて、それでさっさと
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