◆一月前

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楽になっちゃう?」  投げ掛けられる問いは愉悦を含んで。 現に背後のそれの口角は上を向いて、その目は妖しく光を瞬いた。  しかし彼は、細めた目をそのままに、対して力の入ってなかったソレからそろりと己の手を引き抜いて、それに向き合うことなく踵を返した。 「あ~ら、無視?  せっかく、面白そうな話持ってきたのに」  校舎の中に戻ろうとするその背中に、それはにやにやと笑いながら声を張り上げて言う。 すると彼は立ち止まり、少し間を空け振り返った。 「…………面白い話?」  彼が興味を示したことに、ソレはますます笑みを深める。 愉しそうに。 「そう。 すげぇ面白いはなし。 気になるだろ?」  遠回しな言い方に、彼は眉を寄せ、しかし迷いながらソレに向き直った。 「…………はなして。なにを、もってきたの?」  それが関わることは禄なことがないと知りながら、それでも関わることを選んだ。  ソレは、向き直った彼に機嫌良さげに、くすくす笑いながらそれをつげた。 「『土之宮』が、墜とされたよ、天魔の国に」  今日は良い天気だな。 なんて口調で言うそれに、一瞬間を開けて彼は息を呑んだ。
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