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楽になっちゃう?」
投げ掛けられる問いは愉悦を含んで。 現に背後のそれの口角は上を向いて、その目は妖しく光を瞬いた。
しかし彼は、細めた目をそのままに、対して力の入ってなかったソレからそろりと己の手を引き抜いて、それに向き合うことなく踵を返した。
「あ~ら、無視?
せっかく、面白そうな話持ってきたのに」
校舎の中に戻ろうとするその背中に、それはにやにやと笑いながら声を張り上げて言う。 すると彼は立ち止まり、少し間を空け振り返った。
「…………面白い話?」
彼が興味を示したことに、ソレはますます笑みを深める。 愉しそうに。
「そう。 すげぇ面白いはなし。 気になるだろ?」
遠回しな言い方に、彼は眉を寄せ、しかし迷いながらソレに向き直った。
「…………はなして。なにを、もってきたの?」
それが関わることは禄なことがないと知りながら、それでも関わることを選んだ。
ソレは、向き直った彼に機嫌良さげに、くすくす笑いながらそれをつげた。
「『土之宮』が、墜とされたよ、天魔の国に」
今日は良い天気だな。 なんて口調で言うそれに、一瞬間を開けて彼は息を呑んだ。
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