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◇出逢いⅠ
――――少年が真実を知った数日後に、ソレは現れた。
「キミが名無しちゃん? ハジメマシテ~俺は――――だよ。 まだキミには難しいだろうから、そうだなぁ~…………イチイ、て呼んで」
その時聞いたソレの名前を、少年は何故かすんなりと‘受け入れて’しまったけれど、ソレの言う通り、ソレをイチイと呼んだ。
ソレ――――イチイは、茶色の瞳をすうっと細める。
「あっれ? れれれ? ねぇ、ねぇねぇねぇ名無しちゃん? ちょっと、俺の名前言ってみて?」
――――イチイ。
「違う違う違う。 そっちじゃなくて、ホントの、俺の‘名前’」
ソレは先程までのふざけた空気を一転させて、まるで獲物を狙うような鋭い気配を纏わせてくる。
少年はその変化に驚きながらおずおずと最初に聞いた‘名前’を口にした。
‘――――’
「…………うわ、うっそ、まじで? うわ~~~~なんでなんでなんで?‘捕まる’訳ないと思ってたのに…………」
うそ~や、なんで~を連呼するソレに、少年は訳がわからずぽかんとしていた。
暫くして、ソレは己の中でどうしたかはわからないが何かを結論つけて納得させると、少年と目線を近づけるように‘膝をついた’。
「主が見つけたのは本物みたいだね。 いやぁ。疑ってるつもりはなかったけどさぁ、実際実物見るまで信じてなかったよ」
あははと軽く笑いながら、ソレは少年の手をそっと手に取り、目の前に持ち上げた。
――――その手の、まるで氷のような冷たさが、かの闇と同じで、少年はどきりと息を呑んだ。
冷たい、ツメタイ、テ。
「まぁでも捕まっちゃったもんは仕方ないや。 名無しちゃん、たとえホントの名前が言えても俺のことはイチイって呼んでね?
あと、主はキミに従えって俺に命じられたから、俺はキミに従うよ。 でも覚えていて?
俺は、君を‘許したくない’」
最初はまたふざけた口調だったが、最後の一言だけ一変して殺意にも似た、暗い口調で告げてソレは少年の手の甲に口付けた。
そして直ぐに立ち上がるソレに、しばし呆然と見上げ、少年はまたニコニコ軽い表情を浮かべるソレに向けて口を開いた。
――――なんのことか、わからないけど。
まだ拙さの残るしゃべり方に、ソレはん? と首をかしげる。
――――あなたが、あの人に近いものなのはわかった…………あんしん、して
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