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◇昔話し、そして今
昔、あるところに仲の良い夫婦がいました。 夫婦は毎日毎日、幸せそうに笑顔で、周りの者たちも温かくなるぐらい穏やかに暮らしていました。 しかし、そんな夫婦には子供がいません。 長い間子供が出来ず、夫婦たちはそれだけが残念でした。
そんな夫婦に、ある日とうとう子供が出来たのです。
夫婦は喜びました。 喜び、感激し、三日間祝い続けました。 周りの者たちも祝福してまわりました。
幸せ絶頂で毎日を過ごしていた夫婦たち。
しかし、ある日不慮の事故でその子供は命を落としてしまいました。
夫婦は絶望し嘆き悲しみ泣き暮れました。 周りの者たちも夫婦の不幸に涙を流しました。
夫婦は大切な我が子が亡くなったことを受け入れられませんでした。
夫婦は現実を受け入れられませんでした。
泣き暮れて、悲嘆にくれ、そうして夫婦は狂っていってしまいました。
夫婦は禁忌に触れてしまいました。
亡くなった我が子を、悪魔と契約を結んで蘇らせてしまったのです。
悪魔はいいました。
――――その子供を蘇らせる代わりに、十六年後、その子の命を差し出すこと。
それが、悪魔との契約の代償。
夫婦は我が子が蘇り歓喜し、喜び舞い上がりました。 その両手に抱きしめ、思うままその暖かみを感じました。
しかし、十六年後には再びこの命を失わなければいけません。
夫婦は考えました。 どうすれば我が子を失うことなく悪魔に代償を払えるか。
そうして夫婦は、その代償を別の命に肩代わりさせることに決めたのでした。
その時、まだ母親の腹の中にいた、もうひとつの命に。
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