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ジェットコースターだって頂点まで登ったならあとは回転しようが急降下しようが、止まるまでしがみつくしかない。飛行機は雲の中をヤミクモに突っ込んでいく。先は見えなくても飛ぶしかないって言ってるみたいで。
「綾香さん、さっきの返事を」
……今更だ。茨の道なら今までもそうだった。由也くんと別れて東京を離れるのだって茨の道だ。何を今更怖がる必要があるだろう。
「由也くんっ、あの、私っ」
由也くんはそんな私の心を見透かしたかのように笑った。
「綾香さんなら大丈夫」
「へ?」
「綾香さんはそのまま、飾らなくていいから」
「あ……うん」
「うん、って言いましたね?」
「うん。……ええっ?、や、そのそれはっ!」
ニコニコと笑う由也くん、からかってるのか気遣ってるからなのかは分からない。でもいい、この笑顔があれば乗り越えられる気がする。ただの直感。
由也くんは私の手を握る。私ももう片方の手を重ねて、由也くんに微笑んだ。
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