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あれから3年。由也くんは25歳、私は28歳。営業も軌道に乗り、由也くんはスマイル乳業の看板営業社員になっていた。
「結婚してください!かな~、僕のお嫁さんになってください!かな~。いきなり歌っちゃったりして、嫁に来ないか~って。いや、それはナイナイ」
そんな馬鹿な妄想をしてるとベルが鳴る。由也くんだ。私は一目散に玄関に向かう。
「お疲れ、上がって」
ドアを開けるとスーツ姿の由也くんが立っていた。手には一流ホテルのロゴ入りのケーキ箱。
「うわあ、ありがとう! こんな高級品!!」
私はますます期待した。由也くんはプロポーズに来たって。照れてるかな、緊張してんのかな、って顔を覗いたら、青白い顔をしていた。
「どしたの? 顔面蒼白だよ」
それでも私はまだ気付かなかった、一世一代のプロポーズという大仕事を前に緊張してるんだと解釈してた。
由也くんは靴を脱いできちんと揃えてから部屋に入った。いつもだって脱ぎっぱなしって訳じゃないけど今夜に限っては屈んで手を添えて並べて。
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